本書は、カワウソ再発見から最後の生息確認に至る約50年の記録である。
すでに絶滅したと思われていたニホンカワウソ。日本にはもはやいなくなったというのが学会の定説であったが、四国西南部の海岸線や河川には戦後もなお生息していた。そう再確認されてより、愛媛県獣として、さらに国の特別天然記念物に指定され、絶滅させまいと懸命の保護活動に取り組まれた。しかし、それから58年を経て、平成24年(2012)8月、環境省よりニホンカワウソの絶滅が宣言された。
なぜ保護は成功しなかったのであろうか。水辺の生態系の頂点であった動物であり、河童のモデルでもあったカワウソは、どのような自然環境に支えられていたのだろうか、明らかにしていく。